異文化理解・交流講座「身近な異文化と自身のアイデンティティ」
(講師:長田(おさだ)恵美(さとみ)氏 ベトナム語通訳・翻訳者)
鶴見大学文学部主催 異文化理解・交流講座「身近な異文化と自身のアイデンティティ」(講師:長田恵美氏 ベトナム語通訳・翻訳者)が2019年12月4日(水)に本学1号館201教室で行われました。
長田先生は1歳半でボートピープルとしてベトナム人のご両親と共に難民として来日され、それ以来日本で暮らしています。この講義では、ご両親が国外に出る決意をなさった理由、フィリピン籍船籍に救助されて日本にたどり着いた経緯、その後の日本での生活(和歌山、沖縄、東京/国際救援センター、神奈川)、日本国籍取得と帰化、第2言語習得、通訳・翻訳の仕事、母国文化の継承とアイデンティティ形成、移民を経験した家庭の家族関係、恋愛と結婚等を通してみる異文化事情など、日越バイリンガル話者として育った経験から多くのことを詳しくお話しくださいました。
長田さんのご両親は、祖国ベトナムを離れ、たどりついた日本で日本語と文化を学び、懸命に働き子供たちを育て上げました。長田家の姉妹は日本の学校で学びつつ、家庭ではベトナム語を使って生活されたそうです。幼い頃から、父上の「自分のルーツを忘れるな」という思いを胸にベトナム語・文化を継承し、日本や留学先であるアメリカからは、自分が良いと思うものや自分に合うものは積極的取り入れて、逆に自分に合わないと思うものは無理して取り入れないという方針にたどり着き、自分のアイデンティティを確立したそうです。そして、バイリンガル、バイカルチャーであることで感じる困難さ以上に、充実した経験を享受なさっていることをお話しされました。
講義の締めくくりとして、普段私たちが触れることが少ないベトナム語についても説明いただきました。その言語的特徴は大変興味深く、第2言語学習に対する興味を新たにした学生も多くおります。長田先生、ありがとうございました。
受講生のコメント
1番印象に残ったことは、来日後、家族で盆踊り大会に出かけた時に、お父様が「なんて平和なんだ」とおっしゃった一言です。私は今まで普段、日本が平和だと感じたことがなかったため、そのような時に平和を感じるのだと再認識しました。長田さんのお話しが大変わかりやすく、ベトナムに関して知ることもでき、大変身になる講義でした。
英語英米文学科1年生 田中美宇
来日後、言語や文化の違いで、親子間のコミュニケーションが取れない家庭があることや、その苦労を知りました。また、文化背景の異なるカップルの結婚に際しても、文化の違いから、擦り合わせを要することなどを理解しました。今後、困っている外国の人がいたら自ら進んで手助けすることが大切だと感じました。
英語英米文学科1年生 大野淳也
日本のように平和な国で生活していると想像もつかないようなことが、ベトナムでは起きていたことを学んだ。長田さんの話からは、難民は様々な権利が制限されていること、異国で生活することの難しさや辛さが大変よく伝わってきた。
英語英米文学科1年生 松下柊
難民については大まかに理解をしていたつもりでしたが、実際に当事者の方から講義を受けたことにより、自分が持っていたステレオタイプを確認しました。また、ステレオタイプと実態との差異を知りました。
英語英米文学科2年生 野口文哉
今回、話を聞き、長田先生のご家族は来日後、来日前に思い描いていた生活とは違うようなこともあり、とても大変であったのだろうと思う。日本で生活するとはいえ、家族ではベトナム文化を忘れずに生活することで日本とベトナム両方の言語と文化がわかる。それは相当な武器だ。人にはそれぞれ武器になるものがあると改めて感じた。このようなバイカルチャー/バイリンガルの人たちがいることが、もっと伝わればよいと感じた。
英語英米文学科3年生 島内光大
難民の人々の抱える辛さがとてもよく分かった。難民の人たちと距離があるのが現実だと思う。その距離を少しでも、皆で縮めなければならいない。
英語英米文学科3年生 野澤太地