異文化ワークショップ
応用演劇のアプローチから異文化理解、異文化間コミュニケーションを考えるワークショップ、「ダイバーシテイと異文化の体感的理解~『アントニーとクレオパトラ』(シェークスピア作)の世界に遊ぶ~」(オンライン配信 2021年12月8日)を行いました。ワークショップ参加者に向けたファシリテーターのオーハシヨースケさん(演劇教育家・身体詩パフォーマー)のメッセージと参加者の体験記を掲載します。オンラインという新しい試みでしたが、配信型ワークショップという形式でも有意義な体験型の学びを得られるという発見がありました。
草薙 優加 記
実際にパソコンの前で、その場歩きなどの簡単な動きをしてもらい、その身体感覚を基に自分の行動タイプを判断し、個々人の行動様式におけるダイバーシティに目を向けてもらいます。そして、その身体感覚を使ってエジプトとローマの文化差からダイバーシティを実感として味わいます。また、手の動きを使ってエジプトとローマ帝国の文化的特徴を表現して、『アントニーとクレオパトラ』の作品背後にある世界観を味わってもらいます。そこから、文化差を体感的にブリッジする工夫をいろいろ提案してください。なぜなら、文化差をブリッジするには思考・認知以上に生理的・無意識的な拒絶や違和感が壁となるからです。そんな授業を試みたいと思います。
今回のワークショップでは、「知らないことを知る」を前提に表現を通して異文化理解を体感することを目的に学びました。オンラインでしたが、音楽を身体で表現することや日常生活で当たり前のように行っている言動等を、様々な視点で身体的かつ思考的に考える学習をしました。
このワークショップでは、まず歩き方に注目して各自が大きく歩くのか、小さく歩くのかを決めて実際に歩いてみて、その理由を考えました。私は「大きく歩く」を選択しました。大きく歩くと自然に胸を張れるからです。ここで考えたことは歩幅です。歩きながら、日本では自信がなく小さく見せようとする人が多いのではないか、アメリカなど外国では大きく歩くと答える人の方が多いのではないかと推測しました。歩くという行動一つからも異文化的な視点を持つことができると知り、小さな点からも異文化を意識していくことが重要だと気づきました。この推測がその通りなのか、今後確かめてみたいと思います。
次に、音楽を聴いた上でイメージを膨らませ、主人公の性格や音楽を感じとって考え、音楽を聴きながら手(身体)を使って表現しました。人それぞれ表現の仕方がありましたが、私はテンポによって、テンポが速ければ手のひらを裏返すのを早くしたり、逆にテンポが遅ければ手のひらを裏返すのを遅くしたりするようにしました。この表現の仕方もワークショップの参加者一人一人で異なりますが、表現者である参加者の文化背景が異なると、もっと違う表現の仕方があるのではないかと感じました。
これらの活動から、異文化間コミュニケーションでは英語やその他の外国語で話すだけでなく、顔の表現など身体で表現することもコミュニケーションの一つであると気づき、その大切さを学びました。また、今回のワークショップでオーハシさんの表現力、特にその表現で様々な事に挑戦していく力にとても感心しました。私は、今までコミュニケーションというものを会話のみであると考えていましたが、これからは言葉以外でも様々なことを表現しコミュニケーションをはかっていきたいと思います。オーハシさんのワークショップで学んだことを活かし、さらに表現力を磨いていきます。
英語英米文学科1年生 小倉 潤琉
子どもの頃からアントニー的な論理偏重型で、感情よりも思考、身体よりも言葉、話し言葉よりも書き言葉を好んで使ってきました。理屈に合わないことが嫌いな私にとって、感情や身体はときに不合理に感じられ、それらを軽視したり、切り捨てたりしてきたところもあるように思います。
初めは少しとまどいながらパソコンの前で身体を動かしましたが、身体の動かし方が変われば感情や思考も変わること、身体もひとつのコミュニケーション手段だということを実感できました。アントニー的な私にもクレオパトラ的な側面が潜んでいるのかもしれない、と気づけたことも良い収穫でした。
オーハシ先生のワークショップに参加するのは2回目でしたが、前回と今回のワークショップを通して、この世界は理屈で割り切れることばかりではなく、言葉が万能というわけでもない、そして正解はひとつではない、ということを学びました。今後は自分の、ひいては他者の感情や身体にもっと目を向け、言葉以外のコミュニケーションにも心を開いていきたいと思っています。
日本文学科4年生 亀山 奈津
※ シェイクスピア作『アントニーとクレオパトラ』は、本学図書館に複数の翻訳本や映像資料が所蔵されています。本作に関心を持った方は、ぜひ図書館に足を運んでください。
※ 本ワークショップは、科研費 基盤研究(C)「多文化共生を促す英語ドラマ・ワークショップ手法の確立と普及」20K02798(研究代表者 塩沢泰子、研究分担者 草薙優加 齋藤 安以子)の助成を受けています。